はじめに
これまで4回にわたりペンプロッタ作成記を書いてきました.
このペンプロッタでやりたいことは概ねできたので,このペンプロッタに関する記事はこれで最終回にします(たぶん).
本記事ではこれまで作成してきたペンプロッタのアップグレードメニューと設定小話を備忘録として記載します.
マイクロステップ有効化
改めてステッピングモータの構造を思い出します.今回使用しているステッピングモータはおそらく2相2曲なのでステップ角は90度ですが,モータドライバのマイクロステップを有効にすることでより細かい角度で制御することができます.また,マイクロステップを有効化することで駆動音が静かになります.
CNCシールドv4は,モータドライバの下にジャンパが実装されています.マイクロステップを有効化するにはモータドライバのMS1~3の端子に駆動電圧(5V)を印加する必要がありますが,このジャンパはGNDに接続されているためフルステップから変更できません.
有効化するには次の記事で紹介されているように,CNCシールド自体に手を加える必要があります.なぜ最初からそう設計されていないのか.マイクロステップを有効化したらGRBLのパラメータも再調整が必要です.
フルステップと1/16マイクロステップの駆動音と描画精度の比較です.X軸Y軸の駆動音が明らかに小さくなっています.
描画精度も,フルステップではカクカクしていた部分が滑らかになっていることがわかります.
ちなみに,あえて音を出して楽しむ世界もあるので,興味があればどうぞ.
ホーミング有効化
リミットスイッチを使って機械的に原点の位置決めをすることをホーミングと呼びます.ホーミングが出来るようになると手動で原点を微調整する手間が省けるので,ペンの色を替えても原点を基準に決まった位置に描画出来るようになります.
ホーミングを有効化するにはGRBLのソースコードを次のように変更する必要があります.デフォルトでは最初にZ軸のホーミングを行いますが,これをコメントアウトし,X軸Y軸のホーミングのみ行うよう書き換えます.
また今回利用したリミットスイッチとスイッチ固定には次のものを利用しています.
サーボモータ交換
ペンプロッタ作成当初はSG92Rを利用していました.このサーボは安価で使いやすいですが,プラスチック製のギアが意外と破損します.
TowerProのラインナップにはサイズや制御方法が同じでありながらメタルギアを使ったサーボがあります.絵を書いている最中にSG92Rのギアが割れてしまったので,MG92Bに交換しました.ペンを上下するPWM値は再調整する必要がありますが,そのまま取り替えることができます.
サーボモータの駆動ノイズ対策
組立時の説明では触れませんでしたが,サーボモータもモータの一種であり,駆動ノイズが馬鹿にできません.CNCシールド上には5V出力のピンがありますが,モータの駆動ノイズ対策はされておらず,モータに供給する電力も十分とは言い難いです.駆動ノイズはArduinoNanoの動作を不安定にすることがあり,最悪の場合駆動ノイズでArduinoNanoが故障します.
対策として,適当なコンデンサと秋月のDCDCコンバータで5V電源を用意します.
Z軸のモータドライバ部分から外部電源を取り出し5Vに降圧します.最終的にこんな状態です.せっかく専用基板使ってるのに...もう少しきれいに配線したかった...
USBケーブルのノイズ対策
ペンプロッタを動かしているとGRBLが停止する現象が何度が発生しました .色々調べたところ,原因はサーボの駆動ノイズとUSBケーブル上のノイズの複合要因であると推測しました.
ノイズ対策は色々な手法が考えられますが,USBケーブルで簡単に実現可能な対策はシールドとフェイライトコアが現実的なところです.
今回はエレコムの製品にちょうど良さそうなものがあったので,これを使っています.電源ケーブルもフェライトコアが付いているものをおすすめします.
UGSのドライバ変更
GRBLにUGSでGコードを送っていると,突然OFF-LINEのステータスになって停止する場合がありました.UGSの Options > UGS > Sender Options > Connection driver を JSSC に変更することで改善しました.
印刷用紙
今回作成したペンプロッタのテーブルは80mmx80mmです.なんと意図せずちょうど良い付箋が売ってました.ツイッターに上げてる動画の黄色い紙がこれです.これでしばらく印刷用紙には困りません.
おわりに
ペンプロッタのアップグレードメニューを紹介しました.
今回作成したペンプロッタはモータドライバよりステッピングモータの方が発熱するので,モータの熱対策も講じておくと良いです.他にもアイディア次第でいろんな機能を実装出来るし,やっぱり実際に動くものを作るのは楽しいですね.
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