はじめに
3Dプリンタは日進月歩で発展しており,高速化や高解像度化など新しい技術が次々に取り入れられ,製品の入れ替わりが激しい.殊に光造形方式においては,高速出力で重要な要素となるリリースフィルムがFEP,nFEP,PFA,ACFと著しく発展している.
一方でPhoton M3のリリースフィルムは,FEPフィルムとフレームが一体型となっており,自由にフィルムを選択できない.今更誰に需要があるのかわからないけど,今回はPhoton M3リリースフィルム交換について備忘を書いておく.
Anycubic Photon M3のリリースフィルム事情
この機種はエントリーモデルという扱いのようで,製品ページよりスペックは次の通り.

近頃の機種のレジンVatは,レジン Vat 本体,フィルム,フィルムを固定するフレーム,の3構成になっている場合がほとんどだが,本機種では前述の通りエントリーモデルという位置づけだからか,FEPフィルムとフレームが一体型となっており自由にフィルムを選択できない.初心者がリリースフィルムを簡単に交換するための配慮か?フィルム販売の囲い込み戦略か?スペック表からも読み取れず買った当時は全く気が付かなかったけど,最新のリリースフィルムを選べないのは不便極まりない.
これに不便を感じる人は意外と多くいたようで,金属フレームを求める声がちらほら見つかる.世間逸般ではとのように対処されて来たかというと...
- プリントサイズの近い機種のレジンvatを転用する
- Anycubicのオンラインストア Resin Vat for Photon Series によると,Mono X 6Ks,Mono X2,Mono X,Mono X6K,M3 Plusなら互換性があるようだが,M3のレジンVatは他機種との互換性は無さそう.
- インターネット上でもM3互換製品やサードパーティ製品の情報は見当たらず…
- Aliexpressでは一部の製品でM3の表記があるが実は M3 Plus 用である場合が多そう
- フレーム付きFEPフィルムのフレーム部分だけを使う.
- Anycubic Photon Mono – FEP replacement hack
- 力技でフレームを割る方法もあるらしいが,一部ではフレーム分割できないものもあるという噂があったりなかったり.
- フレームを割らなくても,フィルムだけくり抜いて使えないこともなさそう.(一番現実的
- Anycubic Photon Mono – FEP replacement hack
- 有志が作成したフレームを使う
- インターネット状にフレームを公開してくれている方がいて,大体このあたりが使えそう.ただし,この方法はこれを出力できるプリンタや工作手段が必要になる.
- フレームを発注する
- 有志が作成したフレームデータで発注すれば設計の手間は省けるものの,おそらく大抵の場合は新しい機種買ったほうが低コストになると思われる.
- 例えば,Anycubic photon M3 FEP frame replacement kit v2 を dmm.make でステンレスで発注すると10万円くらいする.高い…PA12系ならフレーム2つ合わせて1万円切るくらい.
- 有志が作成したフレームデータで発注すれば設計の手間は省けるものの,おそらく大抵の場合は新しい機種買ったほうが低コストになると思われる.
何はともあれ,今使っているフレーム付きフィルムを捨てずに,フレームだけうまいこと使い回すのが一番お手軽そうである.
ACFへフィルム張替え
今回は純正フィルムのフレームだけをそのまま使う方法でフィルムの張替えを行う.
まずはフィルム張替えのついでにレジンVatの塗装剥がしを行う.材料は次の通り.レジンVatの黒い塗装はレジンで剥げてくるので,フィルム張替えとあわせてあらかじめ塗装を剥がしておくことをおすすめする.
- 塗装剥がす材料(お好みで
途中経過を撮るの忘れてたけれど,塗装を剥がして,ヤスリとコンパウンドかけたらこんな感じ.塗装剥がしはガソリンのような匂いがするので換気必須.

続いてACFへフィルム張替えを進める.今回使ったフィルムや材料はこちら.
- 張替えに使った材料
- 純正フレーム付きフィルムのフレームだけ
- ELEGOO Mars 4 Ultra用 ACFフィルム
- 適当な穴あけポンチ
純正のフレーム付きFEPフィルムからフィルムだけ切り抜いて,フレームの穴に合わせて適当に穴を開ける.

ELEGOOのフィルムは中央の広い面と外周で青い保護フィルムが剥がれるようになっていて,中央の保護フィルムにフレームが収まるのが本来の適正サイズらしい.今回使っているフィルムのサイズは 225x160mm でフレームがちょうど収まるサイズ感だったので,もう少し大きめのフィルムを選んだ方がいいかもしれない.
頑張って穴開けてネジ通したらこんな感じ.※青いフィルム剥がしてから穴開けたほうが簡単.

注意書きにある通り青いフィルムが貼ってあった面がレジン側になるようにしてレジンVatにネジ止めして,はみ出た部分を切り落としたら張替え完了.フィルムのLCD側はすりガラス状で少しざらついた感じ.

おわりに
光造形方式はFDMと比べて高い造形精度がある一方で,レジンの処理が非常にめんどくさい...しかも PhotonM3 は Anycubic の製品Wikiから存在が抹消されているし,レジンVatのフレームが全く流通してなくてつらい.レジンVatやプラットフォームを共通規格化してくれないかなぁ…
ちなみに日本語でも英語でも 「ACFフィルム」って表記をよく見かけるんだけれどAdvanced Composite Film Film...ってコト!?
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